6月27日(日)東京農業大学においてらん懇話会第61回大会が開催され、講演会においてCOSPA明智の「パナマのラン」に関する話題が提供されました。

講演の要旨は以下のとおりです。
パナマとパナマのランの紹介
地理 南アメリカ大陸(ゴンドワナ大陸由来)、北アメリカ、メソアメリカ(ローラシア大陸由来)、パナマ地峡(約350万年に海底から隆起)
歴史 1519年スペイン人が始めて太平洋岸に作った都市、パナマ。インカ帝国の財宝をヨーロッパに運搬するルート、約100年前にパナマ運河が掘削され大西洋と太平洋をつなぐルートとして発展した多民族国家。
自然 南北アメリカの動植物の交流の場(ピューマ、カリブ松、オポッサム、アルマジロ、ナマケモノ、ラン科植物、ヘリコニア)
ラン科植物 種類が多い(国土面積は中南米の0.5%以下、分布するランの種類は約15%)、分布域の狭い固有種が多い。
ラン科植物の分布拡大と形態的変化―パナマ地峡の役割―
1. ゴンドワナ大陸由来のラン科植物(ゴンドワナ要素)の南アメリカ大陸、パナマ地峡、メソアメリカへの分布拡大の軌跡と形態的変化を、現在分布するラン科植物を調べることにより推定する。Phragmipedium属、Lycaste属、Maxyllaria属、Sobralia属を事例として考察
ラン科植物は約1億年前ゴンドワナ大陸に生まれ、南米大陸内で分布を拡大し、分化をした。約350万年前成立したパナマ地峡を経てメソアメリカまで分布を拡大した。
分布拡大の速度は1万年で約10Kmのレベルである。
多くのラン科植物はパナマ地峡において南米大陸とは異なった多様な形態を獲得し、メソアメリカにおいて更に変化をした。
Phragmipedium属 この原始的形質を多く残す属はペルーやエクアドルなどの南米アンデス諸国で多様に分化し、主にPhra. caudatum及びPhra. longifoliumの2種がパナマ地峡を越えてメソアメリカまで分布を拡大した。メキシコにおいてPhra. caudatumからPhra. exstaminodiumが分化した。
Lycaste属 Lycasteの始原植物は南米産で、Ida属やLycate macrophyllaなどのように、開花期は常緑で、偽球茎にとげがなく、花の色の変化が少ない植物だったであろう。パナマ地峡において落葉性、とげのある性質、芳香性、花の色や形態の多様化が起こり、現在ではメソアメリカに分布する黄色一色、有香、落葉性、とげのあるランが生まれたのであろう。
Maxillaria属 本属は一茎一花で、一葉を頂生する縦皺のよった偽球茎を持つのが一般的であるが、少数偽球形を持たないもの、扇型の茎葉をしたものがある。これらは主にパナマ地峡に分布する。
Sobralia属約120種の内、南米、パナマ地峡、メソアメリカに広く分布する種は2種しかなく、南米大陸、パナマ地峡にそれぞれ多数の固有種が分布する。Soblalia fuzukiaeを含むGlobosae亜属はパナマ地峡にのみ存在する。
2. パナマ地峡には分布域の狭い固有種が多数存在する。このような特異な現象の生じた原因はパナマ地峡成立の過程でこの地域が長期間に渡って、ガラパゴスや八丈島のような島礁であったため、それぞれの島で固有に分化した植物の末裔が現在でも残っているのではないかと推測する。
講演に対し、会場からラン科植物の分化・多様化に及ぼす氷河期以降(最近の1万年程度)の気象変動に注目する必要があるのではないか、パナマのランの保護には、その特異性・重要性に着目するパナマの研究者の育成が重要である、などの貴重な示唆があった。