ラン科植物は約1億年前にゴンドワナ大陸で誕生したと言われ、南アメリカ大陸ではアジア大陸など他とは異なる独自の進化を遂げた。約400万年前、南北両アメリカ大陸はパナマ地峡の隆起により接続し、ラン科植物もパナマを経て中米に分布を広げたと考えられる。中米におけるラン科植物の分布と進化は南米大陸に比較してごく新しい。このことを中南米のPhragmipedium属の分布を例に考察する。
1. Phrag. vittatum, Phrag. lindleyanum, Phrag. pearcei, Phrag. besseae, Phrag. kovachii, Phrag. caudatum, Phrag. longifoliumなど殆どのPhragmipediumは南米大陸において種が分化し、南米各地にそれぞれの分布域を持つ。
2. この内でPhrag. caudatum, Phrag. longifoliumの2種のみがパナマ地峡を経て、中米に分布した。
3. Phrag. exstaminodiumはメキシコにおいて分化した固有種で、おそらくPhrag. caudatumより生じたものだろう。
4. Phragmipediumは約400万年かけて分布域をパナマからメキシコまで約3500km拡大した。従って分布拡大の速度は約10km/万年である。
5. Phragmipediu 属の場合、種レベルの分化は400万年以内で起こる。
ラン科植物各属の南米大陸から中米への分布拡大を検討することにより、どのくらいの期間で、どのようなラン科植物が種レベルで変化を起こしたかを推測できると考える。
明智 洸一郎

Phragmipedium cudata

Phragmipedium longifolium

Phragmipedium exstaminodium