
パナマは世界一野鳥の種類の多い国、蝶々の天国、蛙などの両生類の宝庫、今でも未知のランが発見される国などと言われます。わが国ではこのことがあまり認識されていないのは残念です。なぜ、このような豊富な生物資源があるのでしょうか。

パナマ共和国はパナマ地峡に乗っかっている小国です。もともと南アメリカ大陸と北アメリカ大陸は異なった起源を持ち、白亜紀以降両大陸は海で隔てられていました。そのために多くの生物はそれぞれの大陸で独自の進化を遂げたのです。ところが約350万年前にパナマ地峡が海底から隆起し、両アメリカ大陸が繋がりました。この空白地帯に両大陸からどっと生物が押し寄せたのです。つまりパナマは旧世界と新世界の異なった生物が始めて出会った地です。350万年前と言えば、アフリカ大陸タンザニアのラエトリ遺跡に我々の祖先ではないかと考えられている類人猿アウストラロピテクス・アファレンシスが3人並んで歩いた足跡が残された頃の話です。両世界の生き物たちがパナマ地峡で独自の進化をとげ、多様化したのだろうと考えられます。

熱帯雨林は世界で最も生物多様性に富んだ生態系だと言われます。パナマは熱帯雨林の国ですから、当然生物多様性に富んでいるのだとも言えます。しかし、パナマは新旧世界の生物が始めて出会った空白地帯だったと言うことを看過してはならないと思います。ゴンドワナ大陸は白亜紀後期(7000万年ほど前)に南アメリカ大陸、アジア大陸(インド亜大陸)、アフリカ大陸、オーストリア大陸、南極大陸などに分裂し、生物はその後それぞれの大陸で独自の進化を遂げたといわれます。ゴンドワナ大陸に生まれたラン科植物も各大陸で独自の進化を遂げました。南アメリカ大陸で多様に分化したラン科植物はパナマ地峡成立後に始めて中米に広がったと考えられます。ランはパナマ地峡と言う空白地帯に侵入して、南アメリカ大陸とは異なった進化を遂げた結果、パナマには固有種が多いのではないでしょうか。