COSPA パナマ野生蘭保護活動

パナマの国花

~国花ってなに?~
   様々な国に国花(Floral emblem)があり、まさにその国らしい花が選ばれていますが、必ずしも法で制定されているわけではありません。単に、国民が最も愛する花という場合もあります。(日本の国花も法律で定められてはいませんが、菊と桜らしいです。)
   中南米ではラン科植物を国花に定めている国がたくさんあります。ベルリーズの国花はOrquidea negra(Encyclea cochleate)、
ベリーズの国花 Encyclea cochleate
グアテマラはMonja blanka(Lycaste skinneri)、
グアテマラの国花 Guaarianthe skinneri
コスタリカはGuaria morada(Guarianthe skinneri)、
コスタリカの国花 Guarianthe skinneri
コロンビアはFlora de mayo(Cattleya triannae)です。
コロンビアの国花 Cattleya triannae
パナマ共和国の国花もEspititú santo(Peristeria elata)と言うランです(上タイトル画像)。
   Espititú santoはスペイン語で、キリスト教で言う「聖霊」のことです。(聖書の中で降りてきた神様の霊がハトの形に見えたと書かれています。この花の中心部をよーく見るとハトの形に見えませんか?)日本では花の姿からハトランとも呼ばれます。


~どんな植物か~
   Peristeria elataは大変大きなランで、球茎は直径5~9cmもあり、長さ50~100cmの葉を数枚つけ、花茎は直立して1.5mにも達します。花径は5cmほどのろう質でよい香りを放ち、全体は純白で、唇弁に小豆色の斑点があります。Peristeria属の植物は世界で13種が知られ、樹木に着生するランです。パナマにはこの内の3種が分布し、Peristeria elataは例外的に地面に生えます。しかし、この種を栽培する時には土の下に樹木の枝やおが屑を入れるとよく生育し、この植物は本来着生種だった思われます。けれどあまりに植物体が大きく、花茎が高いので、樹上では安定して生育できず、結果として地上を住処にするようになったのではないでしょうか。


~絶滅危惧~
ワシントン条約は多くの動植物の国際取引を規制していますが、本種は別表Ⅰに採択され、特に厳しく国際取引が規制されています。別表Ⅰには、動物ではパンダなどがありますが、それほど国際的に絶滅が危惧されているのです。ワシントン条約 
(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約))は、かけがえのない野生生物を保護することを目的とし、過度に国際取引に利用されないよう規制する条約です。
Peristeria elataの絶滅が危惧される原因は、生育している地域が限られていて、世界的な気象変動や生育地の開発が進んでいることも挙げられますが、なんと言ってもこの美しい花を山から採取し、生育に適さない都会に販売してしまうことが大きいと考えます。パナマでは本種の乱獲を禁止していますが、国道を車で走ると沿道でこのランの大きな球茎を売っているのを見かけます。地上に生える大きな目立つ植物は乱獲の対象になりやすいのです。我が国のエビネが一時絶滅の危機に瀕した事情と似ています。

絶滅の危機にあったエビネラン

   COSPAはPeristeria elataの絶滅を防ぐ一助として、皆様に本種の株のオーナーになっていただき、APROVACAで保護栽培を続けています。増えた株は自生地に植え戻す計画です。COSPAはオーナーの皆様に1株3000円/年の募金をお願いし、APROVACAに対して栽培管理費を補助しています。