COSPA パナマ野生蘭保護活動

日本人の名前がついたパナマのラン

最近の調査では、パナマ共和国には1300種以上のラン科植物が自生しています(Bogarín等)。これらのラン科植物の属名や種名には特定の個人に因んだものが多数あります。例えばDresslerella属やDressleria属はアメリカの著名なラン研究家 Dresslerに因んでいます。種名ではドイツの植物学者Boucléに因んだSobralia bouchei やパナマ共和国第34代ミレヤ・モスコソ大統領に因んだAcineta mireyaeなどがあります。

Dresslerella elvallensis
Sobralia bouchei
Acineta Mireyae

リストを眺めてみると、その中に『Sobralia fuzukiae Dressler & Bogarin』という種名を見ることが出来ます。一見するとたくさんの他のランの種名の中に見落としかねないものですが、この”fuzukiae”は日本人の名前からきているのです。


Sobralia fuzukiae Dressler & Bogarin

地球の裏側のパナマに自生するラン科植物の種名や属名には残念ながらというか当然ながらというか日本人に因んだものは見当たりません。唯一の例外が2007年にパナマのランコレクターとして有名なAndres Maduro氏がボカスデルトロ県で採取したSobralia属の新種で、Dr. Robert L. Dressler等が命名したSobralia fuzukiae Dressler & Bogarinです。

このランを新種として記載した論文に以下のような記述があります。「このランの名前は日本人女性・三浦 ふづきに捧げられたものである。彼女は1969年生まれ、神奈川県出身で、1995年から二年間JICA青年海外協力隊員としてパナマ共和国ヴェラガス県La Yeguadaに派遣され、地元民に木工を教えた。その後2003年にCOSPAのメンバーとして再度パナマに渡り、コクレ県のEl Valle de AntónでAPROVACA (Asociacion de Productores de Orquideas de El Valle y Cabuya))と共にパナマのランの保護活動に従事した。2005年には本格的にパナマに移り住み、パナソニック・ラテンアメリカの社長秘書として働くとともに、週末APROVACAに通ってランの保護活動を続けた。彼女の活躍は2007年の一月に突然訪れた死によって終わることになった。パナマの友人たちは彼女のことを「パナマ人以上にパナマを愛したパナマ人だ。パナマの友人から、パナマのランをこよなく愛した彼女を讃えてこのランの名前を送る。」(文責:明智)

彼女こそが、 “fuzukiae”の由来となった人物です。 彼女は絶滅が危惧されるパナマのランを保護するためにAPROVACAの人たちと一緒に、保護施設APROVACAランセンターの運営に当たり、センターの一般公開やワシントン条約(CITES)別表Ⅰに挙げられているパナマ共和国国花Peristeria elataのオーナー制による保護栽培、エコツーリズム導入による環境保護教育など多くの事業を手掛け、今日のAPROVACAの基礎を築きました。今ではAPROVACAランセンターはEl Valle de Antónでも有数の観光スポットとなり、世界中の人たちが訪れています。

彼女のお墓はランセンターの中にもあります。パナマに旅行される方は是非エルバジェ・デ・アントンにあるAPROVACAをお尋ねください。(http://aprovaca.com//index1.php、https://www.facebook.com/aprovaca/)