COSPA パナマ野生蘭保護活動

ソブラリアの不思議

   ソブラリアは芦のような茎と葉をもつ大変花が美しいランです。その花はカトレヤのように見事だが、良くても一日は持たない、所謂「一日花」です。その代わりかなり長期間次から次へと新しい花が咲きます。

   ソブラリア属はラン科植物の中では分化した時期が新しいセッコク亜科に属しますが、そのうちでは比較的古い形質を持った仲間で、メキシコから南米にかけての熱帯に約100種が分布する大型の地生ランです。パナマにはソブラリア属植物が40種近く分布していて、この仲間の分布の中心です。

  COSPAの明智代表はパナマ時代にこのソブラリアに関してこんな不思議な現象を目撃しました。

   「私はパナマのコクレ県の太平洋に近いアントンに住んでいました。アントンから山の上のエルバジェにかけての一帯にはSobralia属のランが多数生育していました。Sobraliaの花は色も大きさもさまざまで大変美しいランですが、残念なことに大部分は一日花で朝咲いて、夕方には萎んでしまいます。近所のパナマ人から「毎年10月から11月にかけてのある日同じ種類のSobraliaがあたり一面、一斉に咲きますよ。」と聞いて、一体どこまでが「あたり」になるのか、確かめてみたかったのです。同じ株とか同じ環境に育つ株が同時に開花することは想像できますが、標高が700mも違うアントンとエルバジェで同じ日に一斉に咲き、夕方には萎んでしまうなどと言うことが考えられるでしょうか。」

   「11月のある朝、ご近所さんが「庭のSobralia fenzulianaが60輪も開花した」と知らせくださったので、早速愛車のジープを駆って、同時開花を確認する旅に出ました。アントンからカブジャ経由エルバジェまで、途中地道の山岳道路も含めて30Km程、約1時間の道程でしたが、沿道のどの農家の庭先にもSobralia fenzulianaの紫ピンクの花が開いています。しかし、他のSobraliaは開花していません。山を登り切ったエルバジェのレストランの入り口のSobralia fenzulianaの立派な株も満開でした。Sobralia fenzuliana は少なくとも周囲30Km、標高差700mの一帯でお互いに根が繋がっている訳でもないのに、ある朝一斉に咲いて、夕方には萎んでしまうのです。他種のSobraliaはまた別の日に一斉に咲くと言う全く不思議な現象が見られました。地元の人はSobraliaが一斉に咲く日をEl día de Sobralia(ソブラリアの日)と言って毎年楽しみにしています。」