COSPA パナマ野生蘭保護活動

Coryanthes属

    Coryanthes属はEpidendroideae亜科Cymbidieae連Stanhopeinae亜連に属する着生ランで、非常に湿潤な熱帯雨林に生育しています。一般名はバケツラン(Bucket orchids)として知られています。

    本属の花はラン科植物の中でも特に複雑な形をしています。バケツランは特定のハチ(ミツバチ科ユーグロシン族)と共に進化し、両者は繁殖のために互いに依存しあって、共進化と相利共生の優れた例であると言われています。

    バケツランは偽球茎の基部から1〜3の花をつける茎を下垂させています。唇弁はバケツのような形をしており、内部に強い芳香を放つ液体を分泌します。オスバチは、唇弁内に分泌された液体の芳香に誘引されます。この芳香性の物質はオスバチの膨らんだ後肢の内側にある特殊なスポンジ状の袋に保存され、求愛ダンスの際にメスを誘引します。オスバチは、この物質を手に入れようとして唇弁のバケツ内の液体に落ち、脱出するため出口を目指します。バケツの内部には脱出口につながる小さな突起があります。残りの部分は滑らかで下向きの毛が生えていて登ることができません。脱出口を通ってハチが逃げようとすると、出口は収縮し、花粉塊と接着物質がオスバチの胸部に押し付けられる仕掛けになっています。ランは接着物質が固まるまでハチを閉じ込めたままにしておきます。接着物質が固まると、ハチは解放され飛び去ることができます。この工程には45分もかかります。うまく脱出したハチは同じコリアンテスの別の花に行き、再び同じようにバケツに落ち、今度は逃げる際に花粉塊を柱頭にくっつけて受粉が成立します。一方、後脚に芳香性物質を貯め込んだオスバチはメスバチと交尾するために飛び去ります。

    チャールズダーウィンは、著書「ランの受精に対する昆虫のさまざまな貢献(The Various Contrivances by which Orchids are Fertilized by Insects)」の中で、各種コリアンテスに関する観察と実験結果を紹介しています。しかしながら、ダーウィンはランの受精を担っているのはメスバチであると考えていました。オスのユーグロシンの役割が明らかにされたのは、それからほぼ100年後の1961年であした。

    本属はおおよそ60種以上がメキシコから南米ペルー、ボリビア、ブラジルにかけて分布しています。

    パナマにある種は

Coryanthes picturata

    花には褐色の斑点があり、芳香性の花を1~3月ごろの乾季に開花します。メキシコからパナマまでに分布しています。

Coryanthes panamensis

    パナマやコロンビアのアンティオケに分布し、下垂した茎に複数個の黄色の花をつけます。パナマでは1~3月ごろの乾季に開花します。